2012年08月06日

産経新聞 藤井聡氏「主張」の稚拙

 昨今、京大、東大卒等のタレントが、中高生レベルの問題をクイズで正解することが、さも高学歴であることを誇示するかのような、莫迦げた番組が流行っているが、高々そのレベルの問題に正解したからと言って、何を誇ろうというのか? しかも現役の中高生の方が成績が良いのだから目が当てられない。
 タレントのことは、エンターテインメントの範囲内だから目くじら建てることもないが、これが教授クラスになると少々黙っては居られない。
 問題とするのは、京大教授藤井聡氏の産経新聞「主張」である。氏は以下のように述べている。
「…
 原発がなければ、火力発電を焚(た)き増さざるを得なくなって、その結果、少なくとも年間3兆円相当の化石燃料を余分に外国から輸入しなければならなくなると推定されている。これが国家の富に深刻な打撃を与えるのである。

 第一に、電気料金は値上がりせざるを得なくなり、そうなれば家計のみならず国内経済に深刻な影響を及ぼす。産業の空洞化にも一段と拍車がかかり、長期デフレに苦しむ景気がさらに冷え込み、失業者が増え、その結果、自殺者が増えることともなりかねない。

第二に、電力料金の値上げは電力会社への激しい批判を巻き起こすだろう。その結果、会社側は様々な改革を強いられ、揚げ句に電力供給システムが劣化し、「世界一の停電低頻度」は維持できず、停電で医療機器が動かなくなり、信号機停止で交通事故が増え、それらを通して命を落とす国民の増加に繋がりかねないだろう。

 第三に、石油・ガス輸入代金がさらに3兆円もかさめば、最低で年間3兆円、乗数効果も勘案すれば、その2〜3倍分も国内総生産(GDP)が縮む。日本の燃料需要増大に伴い原油などの価格が高騰すれば年間10兆円を超す経済的な損害を与え、その結果、多くの国民の自殺にすら直結している不況を著しく悪化させるだろう。


 問題点は幾つかあるが、まず第一に「原発はそう簡単に事故を起こさない」という前提のもとに論を進めている点がある。まさしく争点としなければならない問題を問題ともせずに論を進めるのでは話にならない。何故なら前提が「偽」であれば、結論は何を言っても「真」というのは論理学の基本中の基本だからだ。「お前が大統領なら、俺は大統領夫人だ」というのはアメリカ人がよく使う言い回しで、これはオバマにでも問うているのでなければ、論理的に正しい、ということだ。

 安全だと言えない理由は山ほどある。問題になっている大飯原発では、f3という断層が走っていることが分かり、活断層であるかどうかを再調査しなければならなくなっている。もちろんこのような断層の上に原発のような構造物を建てることは法的に違法だ。であるから、早急なる調査が必要だが、驚いたことに、関西電力では、建設申請に拘わる当時の資料がどこにあるか分からないと言っていた。真偽の程は分からないが、假にこの程度の文書管理もろくすっぽできないのであれば、巨大かつ複雑な原発を運用する能力などないと自ら告白しているようなものだろう。

 石川県の志賀原発でも断層が見つかっている。これも活断層の疑いが濃いということで、調査次第では、廃炉にせざるを得なくなるだろう。

 少し見回しただけで陸続と挙がるこのような例にも拘わらず、何の疑いもなく、未だに「安全神話」を信奉しているとは畏れ入る。こういう人が京大教授というのだから、世間一般の人々ももう気付いていいころだろう。肩書きなんぞ信ずるべからずと。本当ならとても寂しいことで、あってはならないことだと思う。しかし同じ京大の教授が詐欺事件起こすのだから、この大学はどんな基準で教授にしているのか分かったものじゃない。

 さて、次に、原発の安全性検査を假に通ったとしよう。(大飯原発については、経済産業省原子力安全・保安院は第2次の審査が必要だと言っていたが、野田首相は強硬に運転再開をしてしまった。電力が足りなくなるという触れ込みだったが、現時点で火力発電所を止めてしまったのは一体どういうことだろうか。総力を挙げても電力は不足するんじゃなかったのでは。閑話休題)。
 多量に発生する放射性廃棄物の処理費用と処理施設、場所に掛かるコストはどうなるのだろうか。だいたい処理ができるのか。最終処分場もないのに。これに掛かるコストが尋常ではないことぐらい経済学者なら調べればすぐに分かるだろう。実際に原発のコストを計算した学者がいる大島堅一立命館大学教授である。彼によれば、原発のコストは、他の発電方式より高くなることが判明している。
cost.jpg
 自然エネルギーが不安定なことは分かる。組み合わせることでスペインなどのように安定化させる可能性はあると思うが、それでも不安はある。そこで制御しやすい火力にしばらくは頼ることになるだろう。燃料調達のコストは慥かに一時的に上がるまもしれない。しかし、日本にはメタンハイドレイトという資源もある。太平洋側の深海にある資源はすぐさま利用できなくても、日本海側の浅い海にもあることが分かっているから、これは現行技術で対応できる筈だ(まさか中国でもできることが日本の技術でできないなんて言わないよね)。燃料に関しては、まだ有望な技術もある。要はエネルギー政策の基本理念をはっきりさせ、つまり脱原発を明確にし、今まで原発に掛かっていた経費をこの新しいエネルギーの開発に掛ければよいのだ。日本の技術者は、目標が闡明になれば、困難な技術でも実現してしまうだけの想像力、技術力はあるのだ。

 さて、原発推進派の裏の懸念は、原子力に拘わる技術の進化を遅らせれば、世界と競合できなくなるという思いだろう。また、密かにプルトニウムを欲しがった政府の思惑もあるに違いない。極めて政治的な世界であるから事実がどこにあるのか未だ不明であるが、日本が原発を脱し、新たなエネルギーによって社会を運営している見本を示せば、逆に世界の方が慌てるという図も描ける。要は、国民、政府にその覚悟があるかどうかだ。

 以上のような事実を無視し、「電力不足になれば大変なことになる」などと単純に恫喝するのは滑稽であり、簡単に信じる国民は少ないのではないか。

国民はもう散々騙されてきたのだから。

posted by Serendipity at 02:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。