2008年11月19日

電気自動車の行方

 アメリカのビッグ3が経営危機に陥り、米政府の支援を要求しているという。金融機関破綻に際して援助をするのであれば、こちらにもよこせ、という感覚なのだろう。まさしくその部分で、米政府は難色を示している。そりゃそうだ。自由主義経済を標榜しているアメリカが、私企業が破綻したからといって、おいそれと補助をだすことなどできない。だからこそ今回のアメリカ発金融危機によって、金融業界に支援をしたことは大きな恥であり、その問題は十二分に検証されることを待っている。二度と詐欺まがいの金融商品が市場に出回らないように監視が今後は必要だろう。
 ところでビッグ3だが、最近「誰が電気自動車を殺したか?」というDVDを見た。なんと1990年代この時点で160kmも走れる(それでも短いと言われた!)電気自動車(以下、EV)が既にあったではないか。GMのEV1というEVは、熱狂的に受け入れられたのだ。価格が3万ドルから4万ドル以上という高価なものであったがため、月当たり350ドルから600ドル弱というレンタル形式を取っていたが、それでも人気は衰えず待機リストは一杯であったという。
 もともと燃料高騰という問題ではなく、大気汚染の問題からEVがコミュータの一形態として登場したわけだが、それよりも、その性能の高さ、例えばポルシェがライバルとか、加速の良さ、静かさ、メインテナンスの容易さ(エンジンオイルなど要らない)で圧倒的な人気を博したのだ。
 ところが不可解なことに、GMは突如、EV1を廃棄してしまう。レンタル形式を取っていたことから所有権がユーザにはないことから、まるで子供から飴をもぎ取るような非情な手段でユーザから取り上げ、市場から抹殺してしまったのである。しかも引き上げ次第全車スクラップにするという徹底ぶりだ。
 売れている商品を売らないというメーカがどこにあるのだろうか、とDVDの中ではユーザに語らせているが、まさしく奇々怪々としか言えない所業であった。
 となれば、裏で何等かの陰謀が蠢いたであろうということは、想像に難くない。世の中に陰謀などないと、さも物分かりの良さそうな顔をして高邁なご意見を垂れる御仁もいるが、何等かの策謀など人が集まれば必ず沸き上がってくるものである。「○○の陰謀」などと大上段に構えずとも、ロビー活動などその最たるものであろう。ある団体が政治的に圧力を掛けたり、懐柔を図ろうとするのはまさに日常茶飯事である。その中で圧力団体どころか、集合することさえできない一般大衆は、ただ単に政治に参加する唯一のか細い糸のような選挙権を行使するしか手だてはないのだ。
 さて、そのGMが、今回経営危機に見舞われているというのは、まさしく当然の帰結であろう。金融危機の問題ではない。ユーザの意向にに沿った製品を作り出してこなかった、真っ当な仕事をしなかったということの必然の結果である。莫迦みたいなハマーに頼ったつけが回ってきたのだ。
 とはいえ、慥かに産業としては巨大であるから、見過ごすことによって倒産というのも社会的混乱を生じるであろう。そこが米政府にとっては悩ましいところであるだろうから、ビッグ3として存続させるのではなく、業界再編成を条件に支援に望むということをすべきかもしれない。この程度の責務を負わせなければ、他業界に示しが付かないだろう。
 さて、最後にEVの話に戻ろう。
今回は、燃料危機という喫緊の問題から、また俄にEVに焦点が当たってきたが、今のところメーカ側はEVを出してきていない。実験中だというが、1990年代、日本の各メーカもEVを出したはずである(アメリカで)。ということは、基礎的な課題は既に大部分解消しているはずなのだが、一向に動きが鈍いのは何故だろう。当時と比べれば、バッテリーなど格段の進歩があるし、モータの性能も、その制御技術も相当進んでいるはずだ。その例が、東海大学が製作したエリカだ。300kmオーバーのスーパーカーだが、大学の限られた予算の中(例え、支援があったとしても)でこれだけのものができるのであれば、日常的に使えるEVを作ることなど訳ないことだと思うが、違うのだろうか。EV1でさえ、今のリチウム電池を使えば、750Kmの航続距離に達すると、DVDの中では述べられていた。
 各メーカが、それぞれ次世代自動車を検討してきた中、寧ろ簡単に成立してしまうEVに驚異を感じているのかもしれない。部品点数が圧倒的に少なく、技術もエンジンを使った場合に比べ、比較的簡単であるEVは、自動車メーカでなくても容易に成立させてしまうからだ。事実、中国、インドなど新興国は力を入れ始めている。
 一方、複雑なメカニズムを使うハイブリッドや相当な技術を要する燃料電池車などの研究をし、これから費用の回収を図りたい日本のメーカにとって、電池自動車は、目の上のたんこぶ的要素を持っているのだろう。しかし、GMが、一部圧力団体の意向に負けて、ユーザの意向を無視して失敗したように、日本のメーカが、自社の事情のみにかかすらって、EV販売に二の足を踏むことがあれば、おそらく自動車産業の明日はない。
 三菱が、軽自動車のアイを使ってEVを販売するのは良いが、高々軽自動車で、しかも一回の充電で100Kmとは一体どうしたことなのだろう。EV1に遙かに遅れをとっているではないか。航続距離が少ないと問題にされたEV1でも160kmは走れたのだ。しかもこれは軽自動車ではない。本当にやる気があるのだろうか?
各自動車メーカがEVに本格的に力を入れないと、新興諸国にシェアを奪われることになる。
メーカが自動車業界を衰退産業にしないことをただただ祈しか他はない。
posted by Serendipity at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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